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つくば下河原崎事務所

 

下河原崎高山古墳群(しもかわらざきたかやまこふんぐん 08-220-054) [ご案内マップ]

所在地 つくば市下河原崎字三夜山449-2番地ほか
立地 つくば市の南西部,西谷田川左岸の標高25mの台地縁辺部
調査原因 上河原崎・中西特定土地区画整理事業
委託者 茨城県土浦土木事務所つくば支所
調査期間 2016年6月1日〜10月31日
調査面積 3,246㎡
種類 集落跡,古墳
主な時代 縄文時代,古墳時代
主な遺構 前方後円墳1基,方墳1基,土坑13基,炉穴1基
主な遺物 縄文土器(深鉢,土器片円盤),土師器(甕,坏),須恵器(フラスコ形瓶,平瓶,蓋),旧石器(スクレーパー,石核),石器・石製品(スクレーパー,砥石,丸玉),金属製品(鉄刀,鍔,刀装具,刀子,鏃,銅鋺),製鉄関連遺物(鉄滓),自然遺物(人骨)
*主な時代をクリックすると年表が出ます。

調査の成果

今回の調査では,方墳の第18号墳と前方後円墳の第5号墳を調査しました。第18号墳はすでに墳丘を失った状態で確認され,一辺14mの方形にめぐる周溝の一部と,盗掘に遭った横穴式石室を確認しました。詳細な築造時期は不明ですが,周辺地域の類例から古墳時代終末期と考えられます。第5号墳は墳丘が良好な状態で,墳長約38mでほぼ全周する周溝と2か所の埋葬施設を調査しました。埋葬施設の1か所は未盗掘で,雲母片岩製の板石を用い,南北の妻石2枚,側石は東側3枚,西側2枚で構築されていました。石棺内からは,人骨6体以上,副葬品として鉄刀,刀子,鏃,銅鋺などが出土しました。銅鋺は,古墳出土としては県内7例目になります。仏教の影響や浸透を示す遺物といわれることから,被葬者は仏教を取り入れることができた有力者と考えられます。築造時期は,周溝から出土した須恵器から判断して,7世紀初頭と考えられます。今回の調査によって,下河原崎高山古墳群は古墳時代後期のものであることがわかりました。
 
調査を終えた古墳の遠景 調査を終えた方墳の第18号墳(南から)
 
調査を終えた前方後円墳の第5号墳(真上から) 累々とした人骨と副葬品
 
石棺内北側にまとめられた頭蓋骨 石棺内南側にまとめられた副葬品
 

調査の状況

第5号墳は,土層観察用の畔を残して墳丘を掘削し,どのように土が盛られたかなどを調査しています。盛り土は,黒色土とローム(黄褐色土)が交互に盛られ,高いところで旧地表面から約2mになることが分かりました。現在までに確認した主な遺物は湖西産の須恵器で,フラスコ形瓶が後円部南側の周溝内から,平瓶が後円部南側の墳丘と後円部北東側の周溝内から出土しました。それらの時期は7世紀初頭と考えられます。埋葬施設は,6世紀中頃から7世紀中頃に採用されることの多い箱式石棺と予想されます。第18号墳は横穴式石室の掘り方の調査を進めています。石室底面では板石を据えた痕跡を確認しました。この痕跡と倒れた状態で出土した側壁と奥壁の板石の大きさから推定して,長辺約2.0m,短辺約1.3m,高さ1.1mほどの石室であったと推測できます。壊された石室の状況や副葬品などの遺物がまったく出土していないことから,盗掘に遭ったことが窺えます。今後は,第5号墳の埋葬施設の確認作業を中心に,墳丘下の旧地表面を精査していきます。
 
第5号墳の積み上げられた墳丘 第5号墳の盛土の記録作業
 
第5号墳出土の須恵器フラスコ形瓶 第5号墳出土の須恵器平瓶
 
第18号墳の壊された石室 第18号墳の石室掘方と板石を据えた痕跡
 

調査の状況

7月中旬から8月中旬にかけて,高山古墳群の第5号墳(前方後円墳)と第18号墳(方墳)の調査を中心に進めてきました。第5号墳は,墳丘全体にわたって表土をはがして旧墳丘面の検出を行い,また,周溝の覆土を掘り込みました。周溝は前方部のコーナー部付近の掘り込みが浅く,一見,周溝が途切れているように見えます。しかし,現在の地表面は後世の耕作などによって50cm程度削平されていることから,本来,周溝は墳丘全体にめぐらされていたと考えられます。第18号墳は,周溝の覆土を掘り込み,中央部の埋葬施設についても,ほぼ調査を終えることができました。埋葬施設は,南側の周溝中央部から延びる羨道部と石室からなる横穴式石室と考えられます。残念なことに石室に用いられたほとんどの板石が持ち出され,側壁と奥壁1枚ずつしか残っておらず,どちらも倒れた状態で確認されました。人骨や副葬品などの出土もないことから,盗掘を受けて石室も完全に破壊されたと考えられます。今後は,第5号墳の墳丘の掘り込みと埋葬施設の確認,第18号墳の埋葬施設の掘方調査などを行います。
 
当時の姿を現した第5・18号墳 前方後円墳の第5号墳
 

調査の状況

遺構確認作業が終了し,古墳の調査を進めています。第5号墳は,最大で幅約6.5m,深さ約0.8mの周溝をもつことが明らかになりました。現在は,墳丘の精査を行い,埋葬施設などの確認作業を行っています。また,第5号墳の南側斜面部を中心に,縄文時代早期と考えられる遺構が確認され,土器や石器が出土しています。さらに,第5号墳の西側では,後世に墳丘を削平された,1辺が17mほどの方墳を確認しました。埋葬施設は,南側に羨道をもつ横穴式石室と考えられます。この方墳は,これまでに知られていなかった古墳であることから,第18号墳となりました。
 
姿を現した第5号墳の周溝 地面に浮かびあがった第18号墳周溝
 
南側斜面部の縄文時代の土坑群
 

調査の状況

当古墳群は,17基の古墳から構成されており,今回が3回目の調査になります。今回は,第5号墳などを含む台地縁辺部の調査を4か月間の予定で進めています。6月上旬,篠や草木の伐採清掃を終え,現況の空中写真撮影と詳細な地形測量を実施し,第5号墳の墳形や後世の土地改変の痕跡などを確認してきました。その結果,当古墳は前方後円墳の可能性が高く,特に北側の墳丘には明瞭なくびれ部が観察できます。残念なことに,後円部の東側は後世の土地改変により,その墳丘を大きく削られてしまっています。今後の調査で,当古墳の形状や規模,周溝や埋葬施設などの詳細を明らかにしていきたいと思います。
 
西谷田川とその支流の合流点を望む古墳群 前方部側から見た第5号墳(現況)
 

 
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