発掘遺跡一覧

上境滝の台古墳群

かみざかいたきのだいこふんぐん

所在地 茨城県つくば市上境字滝ノ台297番地ほか
立地 つくば市の東部,桜川右岸の標高約28mの台地上
調査期間 2018年5月1日~8月31日
調査面積 3,415㎡
主な時代 旧石器時代縄文時代弥生時代古墳時代
主な遺構 縄文土器(深鉢),弥生土器(壺),土製品(紡錘車・埴輪),石器(ナイフ形石器・石刃・石鏃・剥片・石核),石製品(垂飾り),金属製品(鉄鏃・鞘尻金具・鳩目金具),ガラス製品(小玉・丸玉)
主な遺物 縄文土器(深鉢),弥生土器(壺),土製品(紡錘車・埴輪),石器(ナイフ形石器・石刃・石鏃・剥片・石核),石製品(垂飾り),金属製品(鉄鏃・鞘尻金具・鳩目金具),ガラス製品(小玉・丸玉)

調査の成果

調査の結果,古墳時代後期の前方後円墳1基,縄文時代の竪穴建物跡1棟と弥生時代の竪穴建物跡6棟をはじめ,数多くの土坑や溝跡などを確認しました。当古墳群は,これまでの分布調査などによって3基の円墳が確認されていました。今回調査した前方後円墳は,そのうちの第3号墳に相当し,全長約35m,幅約30mと推定されます。くびれ部中央から箱式石棺と推測される埋葬施設を確認しましたが,残念ながら石室の石材をはじめ,ほとんどの副葬品が持ち去られ,わずかに刀装具の一部や鉄鏃,ガラス小玉などが出土しました。旧石器時代の調査では,関東ローム層中から6か所の石器集中地点を確認し,それらから安山岩や頁岩,黒曜石,チャートなどの剥片や石核などが出土しました。今回の調査によって,旧石器時代まで遡る人々の生活の痕跡を確認しました。旧石器時代には小さい規模ながらも広範囲にわたる複数の石器集中地点が残され,縄文時代から弥生時代には小規模な集落が営まれ,古墳時代後期になると墓域に変化したことが分かりました。

  • 調査区全景(遠景)

  • 調査区全景(近景)

  • 頁岩製剥片からなる第1号石器集中地点

  • 多様な石材からなる石器群

調査の状況

当遺跡の調査も残すところ約1か月間となりました。前方後円墳である第3号墳の調査は,埋葬施設の掘方調査もすべて終了し,石室の構築方法を観察・記録することができました。また,現在までに弥生時代の竪穴建物跡6棟を調査しました。どの竪穴建物跡も出土遺物が極端に少ないことが共通しています。建物の中央部付近に炉を構築されており,第3・6号竪穴建物跡では,炉の周囲の床面を少し掘りくぼめて足場とし,一方向から燃料をくべていた様子が観察できました。また,第3号竪穴建物跡の柱穴は,平面形状が長方形に掘り込まれており,五平材を使用していたと推測できます。このように,当遺跡は旧石器時代から弥生時代までは小規模な集落が断続的に営まれており,古墳時代後期になって墓域化したことがわかってきました。

  • 弥生時代の第2号竪穴建物跡

  • 第3号墳に掘り込まれた第3号竪穴建物跡

調査の状況

第3号墳の調査も最終段階となり,ラジコンヘリによる空中写真撮影を行いました。埋葬施設の主軸は東西方向に向き,前方部と後円部の境のくびれ部が緩やかな曲線を描いている様子がうかがえます。石室に用いられた石材は全て抜き取られてしまっている状況ですが,その抜き取り痕の観察から,板状に加工した石材を短辺に1枚,長辺に2枚を組み合わせた箱式石棺であったと想像できます。また,埋葬施設内の覆土をすべて回収し,フルイで微細な遺物を回収する作業を行った結果,直径3~4㎜のガラス小玉が43点も確認できました。

  • 第3号墳(西から)

  • 盗掘を受けた埋葬施設

調査の状況

調査開始から1か月が経過し,縄文時代の土坑や古墳時代の墳墓の調査などを行いました。第3号墳は前方後円墳であり,埋葬施設の掘り込み作業を進めております。残念ながら,埋葬施設は後世の盗掘を受けていましたが,掘り方の状況から,本来は板状に加工した雲母片岩を組み合わせた箱式石棺であったと推測できます。内部からは副葬品の一部とみられる刀の鞘尻金具や広根系鉄鏃,直径約4㎜のガラス小玉などが出土しました。第3号墳の築造年代についての詳細は検討中ですが,おそらく6世紀終わりから7世紀初め頃と考えられます。

  • 第3号墳の埋葬施設

  • 鞘尻金具(刀の鞘の末端部)

  • 広根系の鉄鏃

  • 紺碧のガラス小玉

調査の状況

5月から調査を開始しました。遺構確認作業の結果,旧石器時代の石器集中地点,縄文時代の土坑,弥生時代の竪穴建物跡,古墳時代の墳墓をはじめ,各時代の遺物を確認しました。現在,第3号墳の埋葬施設と周溝の掘り込み作業や,縄文時代の土坑や炉穴などを調査しています。第3号墳は全長約30mの前方後円墳と推測されます。残念ながら,埋葬施設は後世の盗掘を受けている可能性が高く,旧状を留めていません。周溝の深さは,後円部側で約1m,前方部側で約0.5m,周溝の上幅は,2~5mと場所によって異なっています。周溝の覆土から当古墳に伴う遺物は出土していません。

  • 第3号墳の埋葬施設の掘り込み作業

  • 第3号墳の周溝の掘り込み作業

つくば中根事務所

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