下河原崎谷中台遺跡
しもかわらざきやなかだいいせき
所在地 | 茨城県つくば市下河原崎字谷中台696番地ほか |
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立地 | つくば市の南西部,西谷田川左岸の標高15~24mの台地縁辺部 |
調査期間 | 2018年8月1日~2019年3月31日 |
調査面積 | 24,652㎡ |
主な時代 | 旧石器時代縄文時代古墳時代平安時代 |
主な遺構 | 縄文土器(深鉢),土師器(坏・高坏・坩・壺・鉢・甕・甑),須恵器(坏・蓋・仏鉢),土師質土器(焙烙),陶器(擂鉢),瓦(丸瓦・平瓦),土製品(丸玉・小玉・支脚),石器・石製品(ナイフ形石器・掻器・尖頭器・石鏃・礫石斧・磨石・石皿・石錘・臼玉・有孔円板),石核・剥片(黒曜石・安山岩・瑪瑙・頁岩・チャート) |
主な遺物 | 縄文土器(深鉢),土師器(坏・高坏・坩・壺・鉢・甕・甑),須恵器(坏・蓋・仏鉢),土師質土器(焙烙),陶器(擂鉢),瓦(丸瓦・平瓦),土製品(丸玉・小玉・支脚),石器・石製品(ナイフ形石器・掻器・尖頭器・石鏃・礫石斧・磨石・石皿・石錘・臼玉・有孔円板),石核・剥片(黒曜石・安山岩・瑪瑙・頁岩・チャート) |
調査の成果
西谷田川左岸の台地上における,旧石器時代から平安時代にかけての人々の営みの痕跡が見つかりました。特に終盤で調査した旧石器時代の成果は,台地縁辺部に12か所の石器製作跡が広がり,小形のナイフ形石器2点,切り出し形のナイフ形石器4点,角錐状石器2点,掻器3点に加え,原石,石核,剥片,微細剥片も合わせ,その出土点数は870点になりました。また12か所に及ぶ石器集中地点の数は県内最多で,本県の旧石器時代を研究する上で重要な資料となるものと考えられます。
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石器製作跡調査の作業風景
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第9号石器集中地点の遺物出土状況
調査の状況
2月は遺跡の北西部で,旧石器時代の調査を再開しました。
7か所の石器集中地点から,ナイフ形石器や,原石,石核,剥片のほか,微細な剥片も出土しています。石材は黒曜石が主体で,次いで瑪瑙やガラス質安山岩が多く,頁岩,チャートなどが少量認められます。第5,第9号石器集中地点からは黒曜石製の切出形のナイフ形石器が出土し,この地に原石を持ち込み,石器を製作していた痕跡を確認することができました。また,ローム層直上から出土した雲母片岩製の石皿は,使用面は滑らかで,毛皮をなめすために使われていた可能性があります。
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黒曜石製のナイフ形石器
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雲母片岩製の石皿
調査の状況
遺跡南部の調査が終了し,隣接する下河原崎高山遺跡と合わせて,空中写真撮影を行いました。また,平成17年度に調査した第1号竪穴建物跡の南半部の調査を行いました。古墳時代中期の竪穴建物跡で,西壁際から焼土や炭化材と共に,土師器の高坏,坩,鉢,壺,甕が10数点まとまった状態で出土しています。建物の廃絶に伴う儀礼行為を示す好資料です。
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調査区全景(南から)
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第1号竪穴建物跡遺物出土状況
調査の状況
遺跡南部の高山中学校側の調査を再開しました。第91号竪穴建物跡は,一辺7mの規模で,壁際の床面から古墳時代後期の遺物が出土しています。特に,土師器坏が11点出土しており,竈の左脇からは3点重なった状態で出土しています。平成17・18年度調査では,調査区の南半部に古墳時代後期の竪穴建物跡が集中しており,今回,集落域が南側へ広がっていることが分かりました。
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第91号竪穴建物跡の北西部の床面から出土している土師器坏
調査の状況
遺跡北西部の縄文時代以降の調査がほぼ終了し,空中写真撮影を行いました。12月は,台地上の平坦部において,古墳時代中期の竪穴建物跡3棟を調査しました。いずれも焼失しており,焼けた土や炭化した木材とともに,土師器の小型の壺(坩)と高坏が2~3点ずつセットで出土しています。これらの土器は,廃絶に伴う儀礼行為に用いられた可能性があります。また,台地縁辺部の南部から西部にかけて,旧石器時代の石器集中地点6か所を確認しました。瑪瑙製のナイフ形石器,頁岩製の掻器のほか,黒曜石や安山岩,頁岩,瑪瑙などの石核,剥片類が出土しています。
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調査区遠景(南から)
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調査区全景(北西から)
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焼土や炭化材が出土した竪穴建物跡
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まとまって出土した高坏と甕
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瑪瑙の剥片の出土状況
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瑪瑙製のナイフ形石器
調査の状況
11月は台地の縁辺部を中心に調査を進めています。調査区南西部の台地先端部は,縄文時代早・前期の遺構が重なり合っており,屋外炉(炉穴)や楕円形の竪穴建物跡,径3m前後の大型の土坑などを確認しました。なかでも,第22号炉穴は,長径2.0m,短径1.5mの楕円形,深さ60㎝で,炉床から壁部にかけて火を受けて赤く変色しており,煙道の痕跡も確認できました。覆土中層からは,縄文時代早期後半(約7000年前)の縄文土器の深鉢が,ほぼ完全な形で出土しました。当期の縄文土器が完形で出土することは極めて稀で,本県屈指の優品といえます。また,調査区の南部では,平安時代の竪穴建物跡1棟を確認しました。竈の両脇に棚が設けられた特殊な構造です。
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完形の深鉢が出土した第22号炉穴
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重なり合った状態で確認した炉穴
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径約3mの大型土坑
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棚が設けられた平安時代の竪穴建物跡
調査の状況
8・9月に行っていた表土除去工事が終了し,10月から本格的な発掘調査を開始しました。遺構確認作業の結果,台地上の平坦部には古墳時代中期の集落跡が分布し,南部から西部にかけての台地縁辺部には旧石器時代の石器製作跡や縄文時代早期・前期の集落跡が広がっていることが分かりました。また,南斜面部には,古墳時代後期の竪穴建物跡も確認でき,今後の調査では,各時代の詳しい土地利用の様子を捉えていきたいと考えています。
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斜面部で確認した古墳時代の竪穴建物跡
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竪穴建物跡のコーナー部からまとまって出土した古墳時代の土器