山王前遺跡
さんのうまえいせき
所在地 | 茨城県牛久市城中町山王前310-3番地ほか |
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立地 | 牛久市の西部,根古屋川右岸の標高約13mの台地部及び斜面部 |
調査期間 | 2018年4月1日~12月31日 |
調査面積 | 7,104㎡ |
主な時代 | 縄文時代古墳時代 |
主な遺構 | 縄文土器(深鉢),土師器(椀・坏・高坏・坩・甕・甑),須恵器(坏身),土製品(紡錘車・土玉),石器(磨製石斧・凹石),石製品(鏃,有孔円板,玦状耳飾),銭貨(文久永宝),貝製品(ツノガイ製品) |
主な遺物 | 縄文土器(深鉢),土師器(椀・坏・高坏・坩・甕・甑),須恵器(坏身),土製品(紡錘車・土玉),石器(磨製石斧・凹石),石製品(鏃,有孔円板,玦状耳飾),銭貨(文久永宝),貝製品(ツノガイ製品) |
調査の成果
山王前遺跡の調査が終了しました。調査によって,縄文時代早期や古墳時代の竪穴建物跡が見つかりました。縄文時代の遺構では,炉穴は95基を数え,中には天井が残された煙道付炉穴が3基確認できました。煙道付炉穴を掘り進めると,奥の底面が赤く焼け,奥壁がえぐれて煙道に続いていることが分かりました。縄文時代の遺物は,炉穴から出土した貝や土坑から出土した玦状耳飾などから,縄文時代早期の生活を考える上での貴重な資料となりました。古墳時代の建物跡では,床下に古い建物の痕跡を確認できたことから,建て替えたものと見られます。
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上空から見た山王前遺跡①
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上空から見た山王前遺跡②
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奥壁が焼けた煙道付炉穴
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煙出し(↓)の残る煙道付炉穴の断面
調査の成果
当遺跡の調査も残り2か月になりました。炉穴は調査区北部からも確認でき,50基をこえています。北に下る斜面では,地点貝層を伴う炉穴も検出しました。出土する貝の種類は海に住む貝です。これまでの調査で,海の恵みに支えられた縄文時代早期から前期にかけての集落の存在が明らかになってきました。また,古墳時代の竪穴建物跡がさらに2棟確認されました。炉を伴う5世紀後半の住居跡と考えています。
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炉穴に形成された地点貝層
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古墳時代の竪穴建物跡から出土した土師器
調査の成果
台地上で,縄文時代の遺構を中心に竪穴建物跡,土坑や炉穴を調査しています。竪穴建物跡は,炉の伴わない早期と考えられるものと,炉の伴う前期と考えられるものがあります。また,土坑からは条痕文系土器と一緒に大きさ3.3㎝×2.8㎝,厚さ8㎜の玦状耳飾が1点出土しました。乳白色の優品で,縄文時代の石製装身具を知ることのできる好材料です。炉穴は30基を数え,6基が重複しているなど多様な様相を呈しています。茅山式の大型の深鉢が数多く出土する炉穴もあり,縄文時代早期の生活を知る上で大きなヒントを我々に与えてくれます。
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土坑から出土した玦状耳飾
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重複した炉穴の調査
調査の成果
今月は,台地上の調査を進め,縄文時代と古墳時代の竪穴建物跡を中心に調査しました。古墳時代の竪穴建物跡は古墳時代中期から後期に位置付けられ,特に注目すべきは他地域で生産された須恵器が出土したことです。調査した古墳時代の竪穴建物跡は,いずれも焼土や炭化材が確認できます。縄文時代の竪穴建物跡の周辺では数多くの炉穴を確認しました。大きいものは長軸2m,短軸1m,深さ80㎝ほどにもなります。また,炉穴に形成された地点貝層も確認しました。貝の種類は,ハマグリ,ハイガイなど海水に生息する貝がみられ,当時の牛久沼周辺の環境や人々の生活が生き生きと感じられます。
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長楕円形の炉穴の調査
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古墳時代の竪穴建物跡から出土した須恵器
調査の状況
遺跡の南の谷部(遺物包含層)の調査が終了しました。今月は,まず包含層の上に構築された古墳時代の土坑や竪穴建物跡,その後遺物包含層中を調査しました。その結果,縄文時代早期の土器が流れ込む以前の,西から南へ湾曲して傾斜する谷部の形状が明らかになりました。台地上の調査では,屋外炉を多数確認しました。屋外炉の火床面は赤く硬化した状態で検出され,早期の土器が出土しています。また,台地上では竪穴建物跡3棟の調査を進めており,古墳時代中・後期の遺物を確認しています。
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遺物包含層除去後の谷の形状(上が西,左が南)
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底面が赤く硬化した炉穴
調査の状況
遺跡南部の遺物包含層の調査を進めています。黒色土を除去した遺構確認面からは,土坑や竪穴建物跡,溝跡を確認しました。古墳時代の第21号土坑からは,土師器の高坏や甕が投棄された状態で出土しています。高坏の形状などから5世紀前半と考えられます。また,ほぼ同時期の第3号竪穴建物跡からは,土師器の椀や壺が出土しています。斜面部の遺物包含層では,縄文時代早期の沈線文系土器や条痕文系土器を多く確認していることから,これから調査する台地上には,これらの時代に生きた人々の集落が広がっている可能性があります。
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第21号土坑遺物出土状況
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第3号竪穴建物跡調査風景
調査の状況
昨年度に引き続き遺物包含層の調査を進めています。斜面部の遺物包含層からは,縄文時代早期に位置づけられる土器が出土しています。また,台地上の平地では竪穴建物跡や炉跡が確認できました。発見された遺物の年代は幅広く,縄文時代早期の沈線文系土器から江戸時代の磁器まで様々です。特に目立つのは,胎土に繊維を含み土器の内外面に貝殻による条痕が施された縄文土器(茅山式)です。このことから,城中地区では長い間人々の生活が営まれてきたことが分かります。これからの調査で,当遺跡に生きた人々の様子をより詳しく明らかにできたらと思っています。
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鋤簾による遺構確認状況
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住居跡から出土した有孔円板