発掘遺跡一覧

島名本田遺跡

しまなほんでんいせき

所在地 茨城県つくば市島名字薬師1726-2番地ほか
立地 つくば市の南西部,谷田川右岸の標高24mの台地上
調査期間 2016年4月1日~2017年3月31日
調査面積 13,839㎡
主な時代 縄文時代古墳時代奈良時代平安時代室町時代江戸時代
主な遺構 縄文土器,土師器,須恵器,土師質土器,陶器,磁器,石器,石製品,土製品,金属製品,銭貨,鍛冶関連遺物
主な遺物 縄文土器,土師器,須恵器,土師質土器,陶器,磁器,石器,石製品,土製品,金属製品,銭貨,鍛冶関連遺物

調査の状況

今年度の調査が終了しました。市道南側の調査区中央部では,古墳時代から平安時代までの竪穴建物跡や奈良時代の鍛冶工房跡が中心で,遺構・遺物ともに前年度の調査区と類似しており,同一の集落であると考えられます。特筆すべき遺物としては,奈良時代の竪穴建物跡から把手付中空円面硯(とってつきちゅうくうえんめんけん)が出土しました。携帯用の硯と考えられており,紐を通すための穴(把手部の両脇)や水をつけるための穴(把手部の正面)が確認できました。墨を擦る部分(陸)の一部が破損し内部が露出していますが,完形品に近いものの出土は,とても珍しいと言えます。
また,市道北側の調査区北部では,緩斜面地を約30m×25mに渡って掘削し,平場を設けた段切り状遺構を確認しました。平場には溝が巡り,地下式坑や井戸跡,土坑,ピットなどが群在しています。出土した遺物は,内耳鍋の破片が大半で,段切り状遺構が機能していた時期は室町時代と考えられます。このように,市道を挟んだ南北で遺構の様相が異なっていることがわかりました。

  • 調査終了状況

  • 竪穴建物跡から出土した把手付中空円面硯

  • 緩斜面地を掘削し平場を作った段切り状遺構

  • 井戸や土坑が群在する段切り状遺構

調査の状況

調査区中央部の調査を進めています。奈良時代の第98号竪穴建物跡では中央付近の貼床の下からピットが見つかり,土製支脚の一部が出土しました。また,竈の周辺の床は粘土ブロックや焼土ブロックを含んだ暗褐色土で埋土されていました。これらのことから,竈の作り替えや床の張り替えをしていたことが分かりました。平安時代の第102号竪穴建物跡からは,石製の腰帯具が7点(巡方3点,丸鞆4点)出土しました。いずれも蛇紋岩製で,表面は磨かれ光沢があり,裏面には銅線などで帯に固定するための穴が開いています。官服の帯に付ける飾りであることから,役人の存在がうかがえます。竪穴建物跡からまとまった数で出土した例は少なく,平安時代の当遺跡の性格を解明する手掛かりのひとつとなる貴重な資料です。

  • 第98号竪穴建物跡床面の下のピット

  • 第102号竪穴建物跡遺物出土状況(東から)

  • 第102号竪穴建物跡から出土した腰帯具(表面)

  • 第102号竪穴建物跡から出土した腰帯具(裏面)

調査の状況

調査区中央部では,古墳時代から平安時代までの竪穴建物跡24棟などを確認しました。第89号竪穴建物跡では,竈のほぼ中央から土師器の甕が逆位で出土しました。甕の体部は火を受け,表面が赤く変色し,剥がれ落ちている部分が認められることから,支脚として用いられていたと考えられます。また,第92号竪穴建物跡では,土製支脚を検出しました。竈内には基部のみが残存しており,上半部は竈付近の床面から出土しています。これまで調査してきたH27年度の調査区やH28年度の調査区南部では,第92号竪穴建物跡と同様に土製支脚を用いた竈が大部分でした。しかし,今回調査中の中央部では,土師器の甕を支脚に転用した竈が多く見られるようになりました。このような傾向は時期的なものなのか,地区によるものなのか,今後検討していきたいと思います。

  • 第89号竪穴建物跡の完掘状況

  • 第89号竪穴建物跡の転用支脚(土師器甕)

  • 第92号竪穴建物跡の完掘状況

  • 第92号竪穴建物跡の土製支脚

調査の状況

先月に引き続き,遺構の調査を進めています。今月の調査で特に注目されるものは,土坑から出土した輪宝墨書土器です。輪宝墨書土器とは,密教法具の輪宝と種子の梵字(ア)を内面に墨書きしたものです。当遺跡では,室町時代の方形状に掘られた第39号溝跡の内側にあたる北東部隅,北西部隅と南東部隅に位置する土坑から出土しています。地鎮に関する遺物と考えられます。近年地鎮に関する遺構や遺物の類例は増えつつありますが,まだまだ類例が少ないため,貴重な資料と言えます。

  • 輪宝墨書土器の出土した北西隅出土地点

  • 出土した輪宝墨書土器

調査の状況

先月に引き続き,竪穴建物跡を中心に調査を進めています。今月の調査で特に注目されるものは,奈良時代の第24号竪穴建物跡から出土している墨書土器と円面硯です。墨書土器は,須恵器の高台付坏で底部外面に「淡水」という文字が書かれてます。同様の文字が書かれた土器が,当遺跡と谷津を挟んだ東側対岸の台地に立地する島名熊の山遺跡から出土しています。平成22年度12区の調査で,低地部から出土しています。
また,円面硯は,当時の役人が使用した硯で.墨を摺る部分が円形の硯です。これらの出土遺物は,奈良時代の当遺跡の性格を解明する手掛かりのひとつとなる貴重な資料です。

  • 第24号竪穴建物跡遺物出土の様子

  • 出土した墨書土器と円面硯

調査の状況

西側の台地上から調査を進め,これまでに竪穴建物跡16棟,鍛冶工房跡1棟,溝跡8条などの調査が終了しました。第67号竪穴建物跡は,長軸6m,短軸5mほどの大きさで,4か所の柱穴と出入り口と考えられるピットを持ち,奈良時代の典型的な住居構造をしています。出入り口から竈までの床面は硬化しており,頻繁に人が出入りし,生活していた痕跡が確認できました。さらに特筆すべきは,竈の火床上面に厚さ5cmほどの灰が堆積していたことです。一般的な竪穴建物跡では,灰が残っていることは少なく,貴重な資料を得ることができました。今後,採取した灰を科学分析などにかけることで,炭化した種子や燃料とした植物があきらかになる可能性が高く,当時の周辺環境を知る手がかりにしていきたいと思います。

  • 奈良時代の竪穴建物跡

  • 竈の中央部に残る灰

調査の状況

島名本田遺跡の調査が始まりました。今年度は,昨年度の隣接地やその北側などを調査していく予定です。まず,昨年度の調査区南側は,6月から表土除去と遺構確認を行い,竪穴建物跡が約40棟,鍛冶工房跡が3棟など多くの遺構を確認しました。遺構の掘り込みは7月から本格的に開始し,遺物は,古墳時代から平安時代を中心に,縄文時代や中世・近世までの幅広い時期のものが出土してます。集落の範囲が昨年度の調査区から南に広がっていることが分かりました。今後は,建物跡の配置などにも注目しながら,集落の全容を解明していきたいと思います。

  • 今年度の調査区(北西から)

  • 斜面で確認された鍛冶工房跡

つくば島名事務所