発掘遺跡一覧

金田西遺跡

こんだにしいせき

所在地 1区 茨城県つくば市金田字西原1,891番地ほか
2区 茨城県つくば市金田字明神西1,845番地ほか
立地 つくば市の東部,花室川左岸の標高26mの台地上
調査期間 1区 2016年8月1日~8月31日
2区 2016年8月1日~2017年3月31日
調査面積 1区 1,469㎡
2区 30,308㎡
主な時代 縄文時代奈良時代平安時代江戸時代
主な遺構 1区 土師器(坏・甕),須恵器(坏・甕・鉢),銭貨(寛永通寳)
2区 土師器(坏・蓋・甕),須恵器(坏・蓋・鉢・壺・甕・甑),銭貨(神功開寳,寛永通寳),石製品(石鏃・打製石斧・砥石・鉈尾),土製品(紡錘車・土玉),金属製品(鏃・斧・鎌・刀子・紡錘車・釘・腰帯具),製鉄関連遺物(鉄滓)
主な遺物 1区 土師器(坏・甕),須恵器(坏・甕・鉢),銭貨(寛永通寳)
2区 土師器(坏・蓋・甕),須恵器(坏・蓋・鉢・壺・甕・甑),銭貨(神功開寳,寛永通寳),石製品(石鏃・打製石斧・砥石・鉈尾),土製品(紡錘車・土玉),金属製品(鏃・斧・鎌・刀子・紡錘車・釘・腰帯具),製鉄関連遺物(鉄滓)

調査の成果(2区)

8月から始まった調査が終了しました。調査の結果,竪穴建物跡54棟,掘立柱建物跡2棟,井戸跡1基,溝跡14条,土坑231基などを確認しました。奈良・平安時代の竪穴建物跡は,調査区南東部から時代が新しくなるにつれて北西に拡がっていったことがわかりました。土師器や須恵器などが多く出土したほか,県内6例目となる神功開寳や当時の役人が身に着けていた腰帯具の巡方,丸鞆,鉈尾なども出土しました。また,今回の調査区は河内郡衙推定地の北側150~200mに位置していることなどからも,河内郡衙の役人や郡衙の維持にかかわった人々が暮らしていた集落の一部と考えられます。

  • 調査区全景(南西から)

  • 調査区南東部に集中する竪穴建物跡

調査の状況

2区を南北に分ける埋没谷の北部は,南部に比較して竪穴建物跡などの数が減少し,奈良・平安時代に営まれた集落跡の北限と考えられます。そこに位置する第429号竪穴建物跡では,竈の燃焼部のほぼ中央から土師器や須恵器の坏5点が逆さに重なった状態で出土しました。それらの位置や状況から,支脚に転用されたものと考えられます。また,第420号竪穴建物跡では,覆土全体に細かい炭化物や炭化材が多く含まれ,他の竪穴建物跡の覆土の様子とは大きく異なっていました。床面から5~10cm上位の覆土下層から炭化物と共に多くの土器片をはじめ,鉄斧や鎌,紡錘車などの鉄製品,当時の役人が身に着けていたと考えられる腰帯具(巡方・鉈尾)などが出土しており,建物が廃絶されて窪地化した場所にまとめて廃棄されたものと考えられます。

  • 第429号竪穴建物跡の竈と支脚

  • 多量の遺物が出土した第420号竪穴建物跡

調査の状況

現在,2区東部の竪穴建物跡を中心に調査を進めています。平安時代の第396号竪穴建物跡では,竈の痕跡が北壁と東壁に確認されましたが,壁溝によって北・東壁の竈は壊されていました。西壁中央部には袖部のある竈が付設されていました。そのため,西壁の竈が最後に使用され,古い竈を壊して新しい竈を作り直したと考えられます。平安時代の第402号竪穴建物跡の竈では,右袖部に須恵器甕が,左袖部に土師器甕が貼り付けられていました。これらは竈の補強材として利用されたと考えられます。また,支脚として土師器甕と坏を逆さに重ねていました。今後は2区の北東部の竪穴建物跡の調査に着手していきます。

  • 古い竈の痕跡のある第396号竪穴建物跡

  • 補強材と支脚の残る第402号竪穴建物跡の竈

調査の状況

2区の東部から調査を進めています。東部は古代の竪穴建物跡などが集中して確認できました。時期の異なる竪穴建物跡や溝跡,土坑などが重なり合って構築されている場合があります。このように重なり合った遺構の調査では,遺構の新古関係を覆土の観察や出土遺物などから判断して,より新しい時期の遺構から調査を進めています。第398号竪穴建物跡は,一辺が2.5mほどの小型で東壁の中央部に竈が付設されています。床はその一部が後世に壊されていますが,残存する床は粘土を混ぜた土で堅固に構築されていました。出土遺物から判断して,平安時代の建物跡と考えられます。今後も古代の竪穴建物跡を中心に調査を進め,官衙周辺で栄えた集落の様相について調べていきたいと思います。

  • 竪穴建物跡の掘り込み作業

  • 小型の第398号竪穴建物跡と出土遺物

調査の状況

1区では,奈良時代や平安時代の竪穴建物跡7棟,大型円形土坑1基,溝跡5条を確認しました。北側に谷や斜面部を含んだ起伏の激しい地形から,居住空間としての利用は比較的少ない状況です。斜面部で確認した大型円形土坑は,出土した土器から奈良時代に構築されたと考えられます。底面中央部にくぼみを有する特徴的な土坑で,溜め井戸や氷室などの機能が考えられます。南側に隣接する金田西坪B遺跡でも,大型円形土坑1基が確認されています。また,東西方向に延びる溝跡からは,銭貨などが出土し,江戸時代に機能していたと考えられます。調査の結果,奈良時代,平安時代,江戸時代にかけて断続的に土地利用が行われたと考えられます。
2区では,表土除去作業と遺構確認作業が終了し,遺構の調査に進んでいます。地形的には,調査範囲の東側から西側に向かって緩やかに傾斜をしており,調査範囲を南北に分断するような浅い谷の存在が分かりました。遺構の確認作業の結果,調査範囲の東側で古代の竪穴建物跡などが数多く確認できました。今後,官衙跡周辺域における人々の暮らしぶりについて,多くの情報が得られるように,調査を進めていきます。

  • 北から見た1区の遠景(市道手前側)

  • 調査を終えた1区(真上から)

  • 底面にくぼみを有する大型円形土坑

  • 古代の竪穴建物跡の確認(2区)

調査の状況

8月から昨年度の調査区(1区)南端部の調査と,その北西部(2区)の表土除去工事が始まりました。1区南部の調査では,昨年度に調査した集落跡と同じ奈良時代や平安時代の竪穴建物跡などを確認し,さらに集落が南に広がっていたことが分かりました。第385号竪穴建物跡では,東壁際の覆土下層から土師器や須恵器の坏・甕の破片が数多く出土し,廃絶時の様子を物語っています。さらに今年度,2区として約24,000㎡の調査が予定されています。現在は広大な調査範囲を2台のバックフォウを使用して表土除去工事を行っています。現在表土除去を半分終えた段階で,竪穴建物跡約40棟,土坑約90基,溝跡約20条などが発見されています。

  • 第385号竪穴建物跡から出土した土器

  • 表土除去工事の進む2区

つくば中根事務所