今月の逸品(2024.3):大谷川遺跡出土の土師器・蓋(ふた)
2024.3.1
発掘・整理遺跡
今回、紹介する逸品は、鉾田市大谷川遺跡から出土したかわいらしい蓋です。
大きさは径6.3cm、高さ3.8cmで、全体に丁寧な磨きが施され、赤く彩色されています。まるで現在の急須の蓋のように見えますが、弥生時代の終末から古墳時代の初め頃のものです。こうした蓋は、特に北陸地方の富山県域での出土例が多く、茨城県から出土することは稀です。北陸地方では頸が細くて長い壺の蓋として使用されたとみられています。今回の調査では、この他にも北陸地方に起源をもつ大型の高杯や内面に段をもつ甕も出土しています。
これらの土器はどこで作られ、どうやってこの地にもたらされたのでしょうか。研究者によるとどうも北陸で作られたものではないようです。近年、弥生時代の終末から古墳時代の初め頃に、北陸地方に起源をもつ土器が福島県会津地方から太平洋岸のいわき地方にまでもたらされていたことが明らかになっています。もしかしたら、太平洋岸伝いに北からやって来たのかもしれません。

第3号竪穴建物跡から出土した土師器・蓋(ふた)